京王電鉄のミニ路線巡り
動物園線、競馬場線…東京の「盲腸線」へ
東府中駅からは、競馬場線に乗る。エスカレーターでコンコースに上がると、競馬場線ホームは1番線との表示があるけれど、片隅にひっそりとたたずむように階段があり、本線のホームへ降りるときのようなエスカレーターはない。もっともエレベータはあるのでバリアフリー対策は取られていた。10両編成の電車が行き交う京王線とは異なりホームは短い。しかも誰もいないので、果たして電車は発着しているのかと不安になった。
それを打ち消すようにまもなく競馬場線の電車がやってきた。動物園線よりもさらに短い2両編成。こちらもワンマンカーである。乗り込んだのは私以外ではサラリーマン風の男性だけ。発車時間まで5分ほどあったので、発車間際には何人か乗ってくるのかなと想像していたのだが、結局駆け込み乗車はなく、乗客2人だけでドアが閉まって動き出した。
車体をくねらせるようにポイントを通過し、京王線と分れて左へ進む。驚いたことに複線である。住宅密集地の中を走り、それほどスピードが出ないうちに減速して府中競馬正門前駅に到着した。動物園線よりも短い2分足らずの乗車時間。距離はわずか900mだ。ホームは1番線と2番線の間にある島式だが、ゆうに20m以上はあるかと思うくらい広い。競馬開催時には新宿への直通電車が発車するので10両編成が停車できる。そのような広大な構内に2両編成がちょこんと停車し、降りたのは2人だけ。静まり返った構内は不気味な感じさえする。改札口の向かいに東京競馬場の入り口があるものの、この日は競馬がない日なので、入口は閉鎖されている。脇に金色の馬の銅像が立っていたので、それを眺めただけで戻ることにした。
帰りの2両編成もガラガラ。先頭車両は誰も乗ってこなかったので貸し切り状態だった。首都圏の電車とは思えない閑散ぶり。これで所要時間がもう少し長かったら、優雅な旅ができるのにと思う。休日昼間の鶴見線を彷彿とさせるのどかさである。
東府中駅で京王線の新宿行きに乗り換えると、もうそこは都会の慌ただしい車内だった。さきほど体験した車内は白昼夢だったのかと思ってしまう落差を感じつつ、現実に引き戻された。
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